グリム ヴィルヘルム・カール・グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
ブレーメンの町楽隊
主人もちのろばがありました。もうなが年、こんきよく、おもたい袋をせなかにのせて、粉ひき所へかよっていました。さて、年をとって、だんだんからだがいうことをきかなくなり、さすがにこのうえ追いつかうのがむりだとわかると、主人は、ここらでろばのかいぶちをやめたものか、と考えだしました。ところで、ろばは、さっそくに、こりゃ、ろくなことではないとさとって、逃げだして、ブレーメンの町をめあてに、とことこ出かけました。そこへ行ったら、町の楽隊にやとってもらえようという胸算用でした。
しばらくあるくうちに、往来に一ぴき、りょう犬が、だるそうにころがって、口ばかりあけて、はっは、はっは、あえいでいるのに出あいました。それはさんざん野山をかけあるいて、へとへとになっているというようすでした。
「おい、すたこら大将、なにをあっぷ、あっぷいっている。」と、ろばは声をかけました。
「いやはや、きいてくれ、こういうわけだ。」と、犬はいいました。「なにしろ年はとる、いくじがなくなる、おいらもむかしのげんきで猟場をかけあるくわけにはいかない。主人は、それならいっそ、たたき殺してしまえということになった。あわてて逃げだしたというわけだが、さて、この先どうしてパンにありつくか、じつはかんがえているところだよ。」