田中 貢太郎
累物語
承応二巳年八月十一日の黄昏のことであった。与右衛門夫婦は畑から帰っていた。二人はその日朝から曳いていた豆を数多背負っていた。与右衛門の前を歩いていた女房の累が足を止めて、機嫌悪そうな声で云った。
「わたしの荷は、重くてしようがない、すこし別けて持ってくれてもいいじゃないか」
与右衛門はそれを聞くと、
「絹川の向うまで往ったら、皆、おれがいっしょにして、持ってやる、それまで我慢しな」
田中 貢太郎
承応二巳年八月十一日の黄昏のことであった。与右衛門夫婦は畑から帰っていた。二人はその日朝から曳いていた豆を数多背負っていた。与右衛門の前を歩いていた女房の累が足を止めて、機嫌悪そうな声で云った。
「わたしの荷は、重くてしようがない、すこし別けて持ってくれてもいいじゃないか」
与右衛門はそれを聞くと、
「絹川の向うまで往ったら、皆、おれがいっしょにして、持ってやる、それまで我慢しな」