田中 貢太郎
雀の宮物語
東北本線の汽車に乗って宇都宮を通過する者は、宇都宮の手前に雀の宮と云う停車場のあるのを見るであろう。私は其の雀の宮へ下車したことがないから実物を見たことはないが、東国旅行談の云うところによると、其処に雀を祭った雀大明神の宮があって、土地の名もそれから起ったらしい。
何時の比のことであったか其の村に相撲が好きで、餅や饅頭の類を一嚥みにするのを自慢にする百姓があった。名は何んと云ったか判らないが、相撲が好きで餅や饅頭を一嚥みにするのを自慢にするような男であるから、何人でも直ぐ無智な好人物を連想する。
実際其の百姓は好人物で女房の好奇的な性癖を満たしてやることができなかったから、女房は他の男によって其の満足を得るようになり、それがこうじて所天が厭わしくなって来た。
「あれを何うかする工風はないの」