田中 貢太郎
長者
何時の比であったか、四国の吉野川の辺に四国三郎貞時と云う長者が住んでた。其の長者の家では日々奴隷を海と山に入れて、海の宝、山の宝を集め執らしたので、倉と云う倉には金銀財宝が満ち溢れていたが、人には爪のさきほども施してやる心がなかった。しかし、こうした貪慾の男でも、我が子は非常に可愛がって、小児のこととなるとどんなに無益な費をしてもいとわなかった。
長者には八人の子があった。某日其の長者の家へ、穢い容をした旅僧が錫杖を鳴らしながら来て手にした鉄鉢をさし出して、
「御報謝を願います」
と云った。庭前で小児の対手になって遊んでいた長者は、之を見ると、