十一谷 義三郎
静物
一
家を持つて間のない道助夫妻が何かしら退屈を感じ出して、小犬でも飼つて見たらなどと考へてる頃だつた、遠野がお祝ひにと云つて喙の紅い小鳥を使ひの者に持たせて寄来してくれた。道助はその籠を縁先に吊しながら、此の友人のことをまだ一度も妻に話してなかつたのを思ひ出した。
「古くからの親友なんだ、好い人だよ。」と彼は妻に云つた。
「では一度お招びしたらどう。」と彼女が答へた。道助はすぐに同意した。彼女はその折りに食卓に並べる珈琲茶碗や小皿のことなどに就て細々と彼に相談し初めた。
十一谷 義三郎
一
家を持つて間のない道助夫妻が何かしら退屈を感じ出して、小犬でも飼つて見たらなどと考へてる頃だつた、遠野がお祝ひにと云つて喙の紅い小鳥を使ひの者に持たせて寄来してくれた。道助はその籠を縁先に吊しながら、此の友人のことをまだ一度も妻に話してなかつたのを思ひ出した。
「古くからの親友なんだ、好い人だよ。」と彼は妻に云つた。
「では一度お招びしたらどう。」と彼女が答へた。道助はすぐに同意した。彼女はその折りに食卓に並べる珈琲茶碗や小皿のことなどに就て細々と彼に相談し初めた。