アンデルセン ハンス・クリスチャン
幸福のうわおいぐつ
一 お話のはじまり
挿絵
コペンハーゲンで、そこの東通の、王立新市場からとおくない一軒の家は、たいそうおおぜいのお客でにぎわっていました。人と人とのおつきあいでは、ときおりこちらからお客をしておけば、そのうち、こちらもお客によばれるといったものでしてね。お客の半分はとうにカルタ卓にむかっていました。あとの半分は、主人役の奥さんから、今しがた出た、
「さあ、こんどはなにがはじまりしましょうね。」というごあいさつが、どんな結果になってあらわれるかと、手ぐすねひいて、待っているのです。もうずいぶんお客さま同士の話がはずむだけはずんでいました。そういう話のなかには、中世紀時代の話もでました。あるひとりは、あの時代は今の時代にくらべては、くらべものにならないほどよかったと主張しました。じっさい司法参事官のクナップ氏などは、この主張にとても熱心で、さっそく主人役の奥さんを身方につけてしまったほどでした。そうしてこのふたりは*エールステッドが年報誌上にかいた古近代論の、現代びいきな説にたいして、やかましい攻撃をはじめかけたくらいです。司法参事官の説にしたがえば、デンマルクの**ハンス王時代といえば、人間はじまって以来、いちばんりっぱな、幸福な時代であったというのでした。