豊島 与志雄

反抗

一

井上周平は、隆吉を相手に、一時間ばかり、学課の予習復習を――それも実は遊び半分に――みてやった後、すぐに帰ろうとした。其処へ保子が出て来て、心もち首筋から肩のあたりへしなを持たせた様子と、かすかに開いた唇から洩れる静かな含み声とで、彼を呼び止めた。

「井上さんちょいと!」

例のことだな、と周平は思った。そして、月の最終の日だということに妙な憚りを置いて、すぐに帰ろうとした自分の態度が、自ら卑屈に感じられた。

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