豊島 与志雄
特殊部落の犯罪
一
「久七、お前が好きな物持って来ただよ。」
晴々しい若い声と共に、表の戸ががらりと引開けられた。
とっつきの狭い土間、それから六畳ばかりの室、その室の片隅に、ぼろぼろの布団の上へ、更に二枚の蓆をかけて寝ていたのを、むっくり上半身だけ起してみると、引開けられた四角な明るみから、つるが飛び込んで来た。眼をぱちくりやってると、鼻先へ徳利をつき突けられた。
豊島 与志雄
一
「久七、お前が好きな物持って来ただよ。」
晴々しい若い声と共に、表の戸ががらりと引開けられた。
とっつきの狭い土間、それから六畳ばかりの室、その室の片隅に、ぼろぼろの布団の上へ、更に二枚の蓆をかけて寝ていたのを、むっくり上半身だけ起してみると、引開けられた四角な明るみから、つるが飛び込んで来た。眼をぱちくりやってると、鼻先へ徳利をつき突けられた。