豊島 与志雄

古井戸

一

初めは相当に拵えられたものらしいが、長く人の手がはいらないで、大小さまざまの植込が生い茂ってる、二十坪ばかりの薄暗い庭だった。その奥の、隣家との境の板塀寄りに、円い自然石が据っていた。

「今時、これほどの庭でもついてる借家はなかなかございませんよ。それですから、家は古くて汚いんですけれど、辛棒して住っておりますの。」

「そうですね。手を入れないで茂るに任してあるところが却って……。それに、あの奥の円い石が一寸面白いですね。」

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