豊島 与志雄

生活について

人の生活には、一の方向が必要である。

生活の方向とは、云い換えれば、生活する者の頭の方向、眼の方向、従ってまた、仕事の方向などを、一緒にした総称である。更に云い換えれば、自分の一生を通じて何を為すかという、その何をの謂である。

一生を捧げて何を為そうかという、その何をが少しも定まっていない生活が世にはある。昨日は甲のことを為し、今日は乙のことを為し、明日は丙のことを為そうとする。一生の間転々として、一定の仕事に従事することが出来ない。宛も風のまにまに漂う水草のようなものである。そして一生の終りになって振返ると、結局何にもしなかったという、落寞とした気持になる。そういう人が世にはある。

私の看る所によれば、それはいけない。

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