豊島 与志雄
野に声なし
芸術上の作品は、必ずその作者の心境を宿す。反言すれば、芸術家の心境は、必ずその作品に反映する。
作者の心境を宿していない作品は、本当の芸術的作品ではない。作品に反映さすべき心境を持たない作家は、本当の芸術的作家ではない。
作品は作家の心境を多く宿せば宿すほど、本質的に益々芸術品となる。作家は作品のうちに己の心境を多く反映さすればさするほど、本質的に益々芸術家となる。
或る文が芸術品であるか否かは、そしてまた、或る人が芸術家であるか否かは、右のような心境の問題の如何に在る。