豊島 与志雄
作者の住む世界
或る雑誌記者がこんなことを云った――「新進作家に少し書いて貰おうと思って、さて誰に頼んだらよいかと考えてみると、結局誰にしても同じだという気がして、考えるのも厄介になってくる。そう思うと、実に退屈でたまらない。」
この退屈だということは、多くの人の実感であるらしい。
なぜ退屈だかを、もっとよく考えてみると、大抵の作家がみな同じような世界に住んでるからだと思う。
作者の住む世界というのは、作品に現われた材料が所在する、その外部の世界を指すのではない。材料はどんなものでもよい。その材料に対する、作者の感じ方見方腹の据え方など、そんなものをひっくるめた世界、即ち、作者の人としての知情意の内部世界を指すのである。