豊島 与志雄
表現論随筆
私達六七人の男女が、或る夏、泳げるのも泳げないのもいっしょになって、遠浅の海で遊んでいた。
一面に日の光が渦巻いていた。空は大きな目玉のようにきらきら光っており、海は柔かな頬辺のようににたにた笑っており、青い松林をのせた白い砂浜が、ゆるやかな曲線を描いて、その海と空と私達とを抱いていた。
人間的な親しい放心のなかに、動物的な遊戯心が踊りはねる。泳げる者の手につかまって、泳げない者がばちゃばちゃやってたのが、いつのまにか遊びにかわって、両手にすくった水をぱっと、相手の頭から浴せてしまった。
「あら、ひとの眼に……。」