豊島 与志雄

北支点描

青島水族館は全く名ばかりのちっぽけなものであるが、ここの硝子の水槽のなかに、ウマヅラハギというおかしな魚が一匹いる。長さ二十センチあまりのものだが、長めの菱形で、頭が見ようによっては馬の横顔に似ている。こいつが身体も尾鰭もしゃちこばらして、頭を上に尾を下に縦に浮いて、じっと天の一角を眺めている。いつまでもじっとして大真面目でいるので、見ているとこちらが可笑しくなる。北京の中央公園で飼育されてるさまざまの奇怪豪華な金魚も、この一匹のウマヅラハギの姿態には及ばない。

北京の北海公園には、※(「木+舌」、第3水準1-85-63)という一本の木がある。山東の山にいくらもある木だそうだが、白樺の幹に松の枝葉をくっつけたもので、如何にもふざけている。白い幹に緑の針葉でつっ立って威張ってるので、見ていると、人をばかにするなと云ってやりたくなる。この木の下にウマヅラハギを泳がしてみたら、面白かろう。

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青島の救済院には多くの孤児が収容されている。この救済院の囲壁に、小さな穴があいていて、夜になるとそこで、院内の室から往来へ箱の口が開かれる。箱の中に子供の泣声がすると、室内の者がこれを聞きつけ、箱をひっこめ、中から子供を取出して、それを院に収容する。この仕方によって、捨児する者は人に顔を見られることなくして、児を救済院に委託することが出来る。人情を加味した合理的な処置であろう。

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