豊島 与志雄
私の信条
私の仕事と世の中とのつながり。――
私の主な仕事は、文筆の業である。それによってどうにか生活を立てている以上、世の中とのつながりがないわけではない。然し、それを分析してみたところで、消極的な面しか出て来ない。設問の要点は、積極的な面のことであろう。それならば、私自身のことを語るより外はない。
私は生来、孤独が好きで、孤独癖とでも言えるものを持っている。兄弟姉妹のない一人児として育った私だ。母から聞いたところによると、幼時、座敷の真中に置いて、玩具一つ与えておくと、数時間、半日でも、おとなしく一人で遊んでいたそうである。三つ児の魂、百までとやら、そういう性質が今に跡を引いている。
一例を挙げると、私は一人旅が好きだ。長時間汽車に乗っていても、一人きりで少しも退屈しない。なまじっか連れがあって、気を遣ったり応対したりするよりも、一人でぼんやりと、景色を眺めたり夢想したりする方が、よほど楽しい。同様に、私はひとと逢っても、甚だ無口で話題に乏しい。