ユゴー ヴィクトル

レ・ミゼラブル

第一編 ワーテルロー

一 ニヴェルから来る道にあるもの

一八六一年五月のある麗しい朝、一人の旅人、すなわちこの物語の著者は、ニヴェルからやってきてラ・ユルプの方へ向かっていた。彼は徒歩で、両側に並み木の並んでる石畳の広い街道を進んでいった。街道は立ち並んで大波のようになってる丘の上を曲がりくねって、あるいは高くあるいは低く続いていた。彼はもうリロアおよびボア・センニュール・イザアクを通り過ぎていた。西の方に、ブレーヌ・ラルーの花びんを逆さにしたような石盤屋根の鐘楼をながめた。ある丘の上の森を過ぎ、それから、ある別れ道の角に、旧関門第四号としるしてある虫の食った標柱の立ってる側にある、一軒の飲食店を通り過ぎた。その飲食店の正面には、「万人歓迎、素人コーヒー店、エシャボー」としるしてあった。

その飲食店から約八分の一里ほどきたころ、彼はある小さな谷間の底に達した。街道の土堤の中に作られたアーチの下を、一条の水が流れていた。道の一方の谷間には一面に濃緑のまばらな木立ちがあったが、道の他方では遠く牧場の方までその木立ちがひろがって、ずっとブレーヌ・ラルーの方まで不規則に延びている様はいかにもみごとだった。

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