豊島 与志雄

手品師

一

昔ペルシャの国に、ハムーチャという手品師がいました。妻も子もない一人者で、村や町をめぐり歩いて、広場に毛布を敷き、その上でいろんな手品を使い、いくらかのお金をもらって、その日その日を暮らしていました。赤と白とのだんだらの服をつけ三角の帽子をかぶって、十二本のナイフを両手で使い分けたり、逆立ちして両足で金の毬を手玉に取ったり、鼻の上に長い棒を立ててその上で皿廻しをしたり、飛び上がりながらくるくるととんぼ返りをしたり、その他いろいろなおもしろい芸をしましたので、あたりに立ち並んでる見物人から、たくさんのお金が毛布の上に投げられました。けれどもハムーチャは、そのお金で酒ばかり飲んでいましたので、いつもひどく貧乏でした。「ああああ、いつになったら、お金がたまることだろう」と嘆息しながらも、ありったけのお金を酒の代にしてしまいました。雨が降って手品が出来ないと、水ばかり飲んでいました。そしてだんだん世の中がつまらなくなりました。

ある日の夕方、ハムーチャは長い街道を歩き疲れて、ぼんやり道ばたに屈み込みました。すると、遠くから来たらしい一人の旅人が通りかかりました。旅人はハムーチャのようすをじろじろ見ていましたが、ふいに立ち止まってたずねました。

「お前さんは奇妙な服装をしているが、一体何をする人かね」

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