織田 作之助

雨

一

子供のときから何かといえば跣足になりたがった。冬でも足袋をはかず、夏はむろん、洗濯などするときは決っていそいそと下駄をぬいだ。共同水道場の漆喰の上を跣足のままペタペタと踏んで、ああええ気持やわ。それが年ごろになっても止まぬので、無口な父親もさすがに冷えるぜエと、たしなめたが、聴かなんだ。

蝸牛を掌にのせ、腕を這わせ、肩から胸へ、じめじめとした感触を愉しんだ。

また、銭湯で水を浴びるのを好んだ。湯気のふきでている裸にざあッと水が降りかかって、ピチピチと弾みきった肢態が妖しく顫えながら、すくッと立った。官能がうずくのだった。何度も浴びた。「五へんも六ぺんも水かけまんねん。ええ気持やわ」と、後年夫の軽部に言ったら、若い軽部は顔をしかめた。

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