豊島 与志雄
鳶と柿と鶏
一
丘の上の小径から、だらだら上りの野原をへだてて、急な崖になり、灌木や小笹が茂っている。その崖の藪に、熊か猪かと思われるようなざわめきが起り、同時にわっと喚声があがって、一人の青年が飛び出して来、次で子供が三人飛び出して来た。
吉村はびっくりして、小径につっ立っていた。
見ると、青年はたしかに李永泰である。無帽で、運動シャツ、学校の教練ズボンのお古らしいのをつけている。三人の子供は村の者らしい。李は吉村に気がつかないのか、子供たちとふざけながら、片手で栗の実をもてあそんでいた。