豊島 与志雄
三つの悲憤
ある田舎に、阮という豪族の一家がありました。
阮家の一人息子の阮東は、志を立てて、都に出ました。そして学問をしながら、長官の周家に、書生として暮すことになりました。
その翌年の春さき、阮東は周家の令嬢素英と親しくなり、いつしか愛を語らう仲になりました。けれども、それも一ヶ月ばかりの間で、素英から急に疎んぜられるようになりました。
阮東は、頭髪を乱し、悲しみに胸をふくらまして、何事も手につきませんでした。そしてよく裏庭へ出てゆきました。その片隅に、竹藪があり、竹藪のそばに四五本の李の木があって、白い花が咲いていました。阮東はその花の下で、熱い涙を流して泣きました。