宮原 晃一郎
子良の昇天
一
むかし三保松原に伯良といふ漁夫がゐました。松原によく天人が遊びに降りてくるのを見て、或日その一人の天の羽衣を脱いであつたのをそつと隠しました。天人は天に上る飛行機の用をする羽衣をとられて、仕方なく、地上に止まつて伯良のおかみさんになりました。此天人が生んだ子は男で子良といふ名でした。
天人は天に住まうものですから、此地上にゐては外国に来てゐるやうなものでさつぱり面白くありません。間がな隙がな外に出ては空を眺めて、嘆いてをります。
「あゝ羽衣があつたら、あの雲の上、あの青い/\空の奥の御殿へ行かれるものを、伯良さんは何処に隠したか知ら。」