坂口 安吾
探偵小説とは
推理小説というものは、文学よりも、パズルの要素が多い。
制作の方法から見ても、一般の文学と推理小説では根柢から違っている。
一般に小説というものは、執筆に先立って、構想せられた一応の筋はあるけれども、書きすゝむうちに、かねての構想をみだして作中人物が勝手な行動を起し、おのずから展開発展して行くところに、文学の創作という意味もあるのであろう。予定の構想通りに書ききれたり割りきれてしまっては、創造という作業は行われない。なぜなら、文学は、自我の発見であり、常に予定をハミ出して、おのずからの生成展開が行われることによって、自我の発見とか創造というものが行われ得るのである。
推理小説は、こうは行かない。