坂口 安吾
白井明先生に捧ぐる言葉
先ごろの本欄に僕の「風報」にかいた「天皇陛下に捧ぐる言葉」を評して俗うけを狙った媚態露出だとのことであるが、白井明先生の鑑賞眼は浅薄低俗と申さなければならない。
あの文章にこもる祖国へよせる僕の愛情や、あれを書かずにいられなかった情熱を読みとることができないとは、白井先生が頃日書く意味もない駄文ばかり書いてるせいなのである。
いったいに文学の反語性に味読の及ばぬ識見低俗なヤカラが文学を批評するというのが間違っている。僕の「堕落論」その他のエッセイにしても、小説にしても、その反語にこもる正しい意味を理解し得ずに、軽率な判読断定を下すから、読者に誤読のお手本を与えているようなものである。
本名では愚かしいソラゴトしか書けず、匿名でしか本音の吐けぬ文学者などというものはない。