坂口 安吾

文人囲碁会

先日中央公論の座談会で豊島与志雄さんに会ったら、いきなり、近頃碁を打ってる?

これが挨拶であった。四五年前まで、つまり戦争で碁が打てなくなるまで、文人囲碁会というのがあって、豊島さんはその餓鬼大将のようなものだった。

僕は物にタンデキする性分だが碁のタンデキは女以上に深刻で、碁と手を切るのに甚大な苦労をしたものだ。文人囲碁会で僕ほどのタンデキ家はなかったのだが、その次が豊島さんで、豊島さんはフランス知性派型などゝ思うと大間違い、僕は文士に稀れなタンデキ派と考えている。

豊島さんの碁は乱暴だ。腕力派で、凡そ行儀のよくない碁だ。これ又、豊島さんの文学から受ける感じと全く逆だ。

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