坂口 安吾
探偵小説を截る
私は探偵小説をよむと、みんな同じ書き方をしているので、まずウンザリする。洋の東西を問わず、本格推理小説となると、みんな形式が同一である。
先ず第一に名探偵が現れる。この名探偵がいかにも思い入れよろしく、超人的にピタリ/\とおやりになる。すると、対照的にトンマな警部とか、探偵とかゞ現れて、この御両人の角突き合いが小説の半分ぐらい占めているというアンバイである。
私は探偵小説の歴史などには疎いが、私のよんだ範囲では、だいたい、この形式はガボリオーで完成しているようである。その探偵はタパン先生の弟子ルコックでありトンマ探偵は、時になんとか警部であり、時に巴里名題の探偵というグアイである。
ルコック探偵には、商売仇きのボンクラ探偵の登場が絶対に必要なものがあり、それによってルコックの修業時代が表現されているのであるが、その他の亜流の作品には必然性というものはない。いつか形式ができ、その馬鹿の一つ覚えというほかに一切の取り柄がないのである。