坂口 安吾
花火
私はミン平が皮のジャムパーを着てやつてきた時には、をかしくて困つた。似合はなすぎるのだ。ミン平も、いかにも全身これ窮屈です、といふ様子で、てれきつてゐるから、尚へんだ。
「てれるから変なのだよ。気取つてごらん。ねえ、胸をそらして威張るのよ」
「やだなあ。小学校の時から胸をそらした覚えがないんだよ、オレは」
このジャムパーは私が昨日散歩の道でふと目にとめると、むらむらその気になつてしまつて、散々ねぎつて(但し時間的に)買つて、彼の宿へ届けて、今度くるとき着ていらつしやい、と置手紙を残してきたのだ。