坂口 安吾
正午の殺人
郊外電車がF駅についたのが十一時三十五分。このF行きは始発から終発まで三十分間隔になっていて、次の到着は十二時五分。それだと〆切の時間が心配になる。
「あと、五十日か」
文作は電車を降りて溜息をもらした。流行作家神田兵太郎が文作の新聞に連載小説を書きはじめてから百回ぐらいになる。約束の百五十回を終るまでは、毎日同じ時間にFまで日参しなければならぬ。駅から神田の家までは十分かかった。
前方を洋装の若い女が歩いて行く。
坂口 安吾
郊外電車がF駅についたのが十一時三十五分。このF行きは始発から終発まで三十分間隔になっていて、次の到着は十二時五分。それだと〆切の時間が心配になる。
「あと、五十日か」
文作は電車を降りて溜息をもらした。流行作家神田兵太郎が文作の新聞に連載小説を書きはじめてから百回ぐらいになる。約束の百五十回を終るまでは、毎日同じ時間にFまで日参しなければならぬ。駅から神田の家までは十分かかった。
前方を洋装の若い女が歩いて行く。