大阪 圭吉
香水紳士
一
品川の駅で、すぐ前の席へ、その無遠慮なお客さんが乗り込んで来ると、クルミさんは、すっかり元気をなくしてしまった。
「今日は、日本晴れですから、国府津の叔母さんのお家からは、富士さんがとてもよく見られますよ」
お母さんからそう聞かされて、喜び勇んでお家を出たときの元気はどこへやら、座席の片隅へ小さくなったまま、すっかり悄げかえって、窓越しに、うしろへ飛び去って行く郊外近い街の屋根々々を、ションボリ見詰めつづけるのだった。
大阪 圭吉
一
品川の駅で、すぐ前の席へ、その無遠慮なお客さんが乗り込んで来ると、クルミさんは、すっかり元気をなくしてしまった。
「今日は、日本晴れですから、国府津の叔母さんのお家からは、富士さんがとてもよく見られますよ」
お母さんからそう聞かされて、喜び勇んでお家を出たときの元気はどこへやら、座席の片隅へ小さくなったまま、すっかり悄げかえって、窓越しに、うしろへ飛び去って行く郊外近い街の屋根々々を、ションボリ見詰めつづけるのだった。