上村 松園

砂書きの老人

まだ私が八、九歳のころ京都の町々にいろいろな物売りや、もの乞いがやって来ていたが、その中に五十歳ぐらいのきたならしい爺さんが、絣木綿のぼろを纒って白の風変りな袴をつけ、皺くちゃな顔には半白の鬚など生やして門々を訪れてまわっていた。

別にものを売るのではない。ただ腰に砂を入れた袋をさげていて、その中に白黒黄藍赤など五色の彩色砂を貯えている。

門前に立っては、もの珍しげによりたかる私どもにむかって、

「それそれ鼻たれ、そっちゃへどけ、どけ……」

青空文庫の作品カード