宮原 晃一郎
科学的の神秘
ストリンドベーリが科學に造詣の深かつたことは、その莫大な著作中に、幾多の科學的研究があることで知れる。ところが、彼は晩年になつてスウェデンボーリの影響を受けて、神祕主義者になつてしまつた。
その種類の勞作のうち、最大なるものは、青書 Blaa Bok 三卷である(シェーリングのドイツ譯では第一卷を Ein Blauduch、第二卷を Ein neues B. として別物扱ひにしてゐる)。
私は今この青書の飜譯にかゝつてゐるが、それは神祕主義といつても、今日、此の國で行はれてゐる、既成、新成の宗教に見る奇蹟や、神癒や、天啓や、依憑などの鵜呑では決してない。
科學が必然的に手をふれ殘してゐる不可知界を指摘して、その弱點を衝き、神祕――寧ろ唯一神の存在、可能を説くところ、形式は説話的ではあるものの、その論證は神學の辨證論的で神祕的なものにふれてもなほ、そこにはハッキリした理智のひらめきを見せてゐる。