野上 豊一郎
七重文化の都市
Augescunt aliae gentes, aliae minuuntur ; inque brevi spatio mutantur saecula animantum, et quasi cursores, vitae lampada tradunt.
―――Lucretius[#「Lucretius」は底本では「Lucretitus」]
一
カイロの町は、東洋でもなければ西洋でもない謂わば東洋と西洋の奇妙に融合した特殊の外貌を持っていて、旅行者にはたしかに一つの大きな魅力である。殊に私どものように、印度洋の諸港を次々に見物して、紅海からスエズ地峡を抜け、地中海を横断して、西洋の境域に入ろうとする者には、カイロは地理的にも文化史的にもまず見て置くべき都市である。