菊池 寛

アラビヤンナイト

昔、ペルシャのある町に、二人の兄弟が住んでいました。兄さんの名をカシムと言い、弟の名をアリ・ババと言いました。お父さんがなくなる時、兄弟二人に、財産を半分ずつに分けてくれましたので、二人は、同じような財産を持っておりました。

さて、カシムはお金持のおじょうさんをおよめさんにもらいました。それからアリ・ババは貧乏な娘をおかみさんにもらいました。お金持のおじょうさんをもらったカシムは、毎日ぶらぶら遊んでくらしていましたが、そのはんたいに、アリ・ババは毎日せっせと働かなくてはなりませんでした。毎朝早くから三びきのろばを引いて森へ出かけて、木を切っては、それを町へ持って帰って売って、そのお金で、やっとその日その日をくらしてゆくというありさまでした。

ある日のこと、アリ・ババが、いつものように森へ行って木を切っていますと、はるか向うの方に、まっ黒い砂けむりが、もうもうと立っているのが見えました。その砂けむりは、見るまにこちらへ近づいて来ましたが、見れば、それはたくさんの人が馬に乗って、いそいでかけて来るのでした。

「きっと、どろぼうにちがいない。」アリ・ババはふるえながら、三びきのろばをかくして、自分はそばの木にのぼりました。そして、こわごわ様子を見ていました。

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