坂口 安吾

カストリ社事件

カストリ雑誌などゝ云って、天下は挙げて軽蔑するけれども、これを一冊つくるんだって、容易じゃないよ。まア、社長の顔を見てごらんなさい。やつれていますよ。これは、キヌギヌの疲れ、などという粋筋のものではない。生活難です。

「オイ、居ると云っちゃ、いかん。居ると云っちゃ、いかん」

これが社長の口癖であった。彼は必死なのである。

なんとかして、カストリ社の入口に受附をつくらねばならぬ。入口の扉をあける。ビルの一室を占めているカストリ社の全景は、ただちに見晴らしではないか。これは怪しからん。

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