坂口 安吾
我が人生観
この原稿を書こうという予定の日になって、久しく忘れていた胃ケイレンを起した。まだ夜の十一時半である。ダンスホールのバンドの音がきこえていた。
私の毎日は夕方の五時六時ごろから七時八時ごろまで、酒をのんで、すぐねむる。十一時半か十二時ぐらいに目がさめる。それから仕事にかかる習慣であった。
机に向うと胃が痛みだした。胃が冷えたせいらしいから、帯をグルグル胃にまいて、しばらく仰臥してみたが、痛みは激しくなる一方だ。たまりかねて売薬を買いに走らせた。
医師に診てもらってモヒでも注射してもらうとすぐ痛みがとまると思ったが、今は新聞小説を書いていて、一日一回ずつギリギリに送っているのである。モヒはよほど打たないと、私には利かない。利くと眠るけれども、目がさめると、一昼夜ぐらい吐き苦しまなければならない。吐き気があまりひどいので、いつも医師が呆れるのである。だから、万策つきた時でないと、モヒを打ってもらわないようにしているのである。