坂口 安吾
明治開化 安吾捕物
生れつき大そう間のわるい人間というものがいるものだ。梶原正二郎という若い御家人がそれだった。そのとき彼は二十二だ。親父が死んで野辺の送りをすませたという晩に、
「今晩は。たのもう。どうれ」
両方分の挨拶にオマケをつけて大声で喚きながらドヤドヤと訪れた七八人。案内もまたず奥へあがりこんで、
「ホトケに線香あげにきたが、ホトケはどこだ、どこだ」
坂口 安吾
生れつき大そう間のわるい人間というものがいるものだ。梶原正二郎という若い御家人がそれだった。そのとき彼は二十二だ。親父が死んで野辺の送りをすませたという晩に、
「今晩は。たのもう。どうれ」
両方分の挨拶にオマケをつけて大声で喚きながらドヤドヤと訪れた七八人。案内もまたず奥へあがりこんで、
「ホトケに線香あげにきたが、ホトケはどこだ、どこだ」