坂口 安吾
明治開化 安吾捕物
「なア、ベク助。貴公、小野の小町の弟に当る朝臣だなア。人に肌を見せたことがないそうだなア。ハッハッハア」
五忘にこう云われて、ベク助は苦い顔をした。イヤなことを云う奴だ。この寺へ奉公して足かけ四年になるが、五忘の奴がこう云いはじめたのは今年の夏からのことである。そのときは、
「貴公、めっぽう汗ッかきだが、肌をぬがねえのがフシギだなア」
「ヘッヘ。お寺勤めの心掛けでござんしょう」
坂口 安吾
「なア、ベク助。貴公、小野の小町の弟に当る朝臣だなア。人に肌を見せたことがないそうだなア。ハッハッハア」
五忘にこう云われて、ベク助は苦い顔をした。イヤなことを云う奴だ。この寺へ奉公して足かけ四年になるが、五忘の奴がこう云いはじめたのは今年の夏からのことである。そのときは、
「貴公、めっぽう汗ッかきだが、肌をぬがねえのがフシギだなア」
「ヘッヘ。お寺勤めの心掛けでござんしょう」