坂口 安吾
明治開化 安吾捕物
「ねえ、旦那。足利にゃア、ロクなアンマがいないでしょう。私ゃ足利のアンマになってもいいんですがね。連れてッてくれねえかなア。足利の師匠のウチへ住み込みでも結構でさア。どうも、東京を食いつめちゃったよ」
足利の織物商人仁助の肩をもみながら、アンマの弁内が卑しそうな声で云う。
めッぽう力の強いアンマで、並のアンマを受けつけない仁助の肩の凝りがこのメクラの馬力にかかると気持よくほぐれる。馬のような鼻息をたてて一時間あまりも力をぬかない仕事熱心なところは結構であるが、カタワのヒガミや一徹で何を仕でかすか知れないような不気味なところが気にかかる。
「何をやらかして東京を食いつめたのだ」