坂口 安吾

明治開化 安吾捕物

妙子は自分の生れた時信家を軽蔑していた。父の全作がそもそも虫が好かない。父だから仕方なしにつきあっているようなものだが、顔を見るのもイヤなのだ。

母が生きていれば家庭に親しみが持てたのかしらと考えてみることもあるが、どうも母のないせいではなさそうだ。彼女の母はあんまり父が冷酷でワガママなので、神経衰弱になり、一日に一皮ずつ痩せたあげく、ハヤリ目とカッケにかかって死んだそうだ。

彼女は継母も軽蔑していたが、もしも実母が生きていれば、継母以上にバカで哀れな存在かも知れないと考えていた。

継母サナエは元旗本の娘であるが、借金のカタに二十いくつも齢のちがう全作のところへお嫁入りした。全作が五十すぎているのに、サナエはまだ三十だ。美人だし、笑いを忘れた顔だから、変に若くミズミズしくて、二十四の妙子が姉にまちがえられたこともあった。

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