寺田 寅彦

マルコポロから

マルコポロの名は二十年前に中学校の歴史で教わって以来の馴染ではあったが、その名高い「紀行」を自分で読んだのはつい近頃の事である。読んでみるとやはり面白い。尤も書いてある記事のあまり当てにならないという証拠は自分の狭い知識の範囲内からでも容易に列挙されるくらいであるが、事実という事は別問題として、単に昔の人の頭に描かれた観念として見るだけでも色々の意味で面白い事が沢山にある。

始めのうちはただ読みっ放しにしていたが、あまり面白いから途中からは時々手帳へ覚え書きに書き止めておいた。その備忘録の中から少しばかりの閑談の種を拾い出してここに紹介してみようと思う。以下に挙げてある頁数は、エヴェリーマンス・ライブラリーの中のこの書物の頁数である。

一

二四八頁にこんな話がある。

青空文庫の作品カード