寺田 寅彦
二科狂想行進曲
一
古い伝統の床板を踏み抜いて、落ち込んだやっぱり中古の伝統長屋。今度の借家は少し安普請で、家具は仕入れ。ボールの机にブリキの時計、時計はいつでも三十度くらい傾いて、そして二十五時のところで止っている。いつまでも止っている。今度の大地震の来る日までは。
二
大掃除の午後の路地の交互点、こわれたおもちゃに葱大根の尻尾、空瓶空ボールの交響楽、マルクス、ムッソリニの赤ん坊の夢を買わないか。汚いものは美しく、美しいものはきたなく。のっぺりの中へ少しこまこまと金銀紫銅のモール。昼食か、そこへおきな。