長谷川 時雨
明治美人伝
一
空の麗しさ、地の美しさ、万象の妙なる中に、あまりにいみじき人間美は永遠を誓えぬだけに、脆き命に激しき情熱の魂をこめて、たとえしもない刹那の美を感じさせる。
美は一切の道徳規矩を超越して、ひとり誇らかに生きる力を許されている。古来美女たちのその実際生活が、当時の人々からいかに罪され、蔑すまれ、下しめられたとしても、その事実は、すこしも彼女たちの個性的価値を抹殺する事は出来なかった。かえって伝説化された彼女らの面影は、永劫にわたって人間生活に夢と詩とを寄与している。
小さき夢想家であり、美の探求者であるわたしは、古今の美女のおもばせを慕ってもろもろの書史から、語草から、途上の邂逅からまで、かずかずの女人をさがしいだし、その女たちの生涯の片影を記しとどめ、折にふれて世の人に、紹介することを忘れなかった。美しき彼女たちの(小伝)は幾つかの巻となって世の中に読まれている。