芥川 竜之介

近藤浩一路氏

近藤君は漫画家として有名であった。今は正道を踏んだ日本画家としても有名である。

が、これは偶然ではない。漫画には落想の滑稽な漫画がある。画そのものの滑稽な漫画がある。或は二者を兼ねた漫画がある。近藤君の漫画の多くは、この二者を兼ねた漫画でなければ、画そのものの滑稽な漫画であった。唯、威儀を正しさえすれば、一頁の漫画が忽ちに、一幅の山水となるのは当然である。

近藤君の画は枯淡ではない。南画じみた山水の中にも、何処か肉の臭いのする、しつこい所が潜んでいる。其処に芸術家としての貪婪が、あらゆるものから養分を吸収しようとする欲望が、露骨に感ぜられるのは愉快である。

今日の流俗は昨日の流俗ではない。昨日の流俗は、反抗的な一切に冷淡なのが常であった。今日の流俗は反抗的ならざる一切に冷淡なのを常としている。二種の流俗が入り交った現代の日本に処するには、――近藤君もしっかりと金剛座上に尻を据えて、死身に修業をしなければなるまい。

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