芥川 竜之介
滝田哲太郎君
◇
滝田君に初めて会ったのは夏目先生のお宅だったであろう。が、生憎その時のことは何も記憶に残っていない。
滝田君の初めて僕の家へ来たのは僕の大学を出た年の秋、――僕の初めて「中央公論」へ「手巾」という小説を書いた時である。滝田君は僕にその小説のことを「ちょっと皮肉なものですな」といった。
それから滝田君は二三ヵ月おきに僕の家へ来るようになった。
芥川 竜之介
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滝田君に初めて会ったのは夏目先生のお宅だったであろう。が、生憎その時のことは何も記憶に残っていない。
滝田君の初めて僕の家へ来たのは僕の大学を出た年の秋、――僕の初めて「中央公論」へ「手巾」という小説を書いた時である。滝田君は僕にその小説のことを「ちょっと皮肉なものですな」といった。
それから滝田君は二三ヵ月おきに僕の家へ来るようになった。