中里 介山
大菩薩峠
一
近江の国、草津の宿の矢倉の辻の前に、一ツの「晒し者」がある。
そこに一個の弾丸黒子が置かれている。往来の人は、その晒し者の奇怪なグロテスクを一目見ると共に、その直ぐ上に立てられた捨札を一読しないわけにはゆかぬ。その捨札には次の如く認められてあります。
この者、農奴の分際を以て恣にてうさんを企てたる段不埒につき三日の間晒し置く者也。
中里 介山
一
近江の国、草津の宿の矢倉の辻の前に、一ツの「晒し者」がある。
そこに一個の弾丸黒子が置かれている。往来の人は、その晒し者の奇怪なグロテスクを一目見ると共に、その直ぐ上に立てられた捨札を一読しないわけにはゆかぬ。その捨札には次の如く認められてあります。
この者、農奴の分際を以て恣にてうさんを企てたる段不埒につき三日の間晒し置く者也。