蘭 郁二郎

植物人間

一

鬱蒼と膨れあがって見える雑木の森が、左右から迫っている崖に地肌も見えぬばかり覆いかぶさっていた。なんとなく空気までもが、しっとりとした重みを持っているようにさえ思われる。いかにも南国らしい眩しく輝く太陽も、幾重にも繁った葉や枝や幹に遮られて川島の足許に落ちて来るまでにはすっかり弱められていた。

川島は、両肩に喰い込んで来るリュックサックを、時々ゆすり上げるようにしながら、舌打ちをまぜて歩いていた。どうやら道を間違えてしまったらしいのだ。

南紀の徒歩旅行を思い立って田辺町から会津川を遡り、奇岩怪峰で有名な奇絶峡を見、あれから山を越して清姫の遺跡をたずねたまではよかったのだけれど、それから熊野川上流の九里峡にまで出る道のりを、自動車道路に沿って行くというのではなんとなく平々凡々すぎるように思われて、不図道を右に折れてみたのが、どうやら失敗の原因らしかった。

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