蘭 郁二郎
自殺
一
それは何処であったか、ひどく荒涼とした景色であった。灰色に鬱々とした雲は、覆いかぶさるように空を罩め、細い白茶けた路はひょろひょろと足元を抜けて、彼方の骸骨のような冬の森に消えあたりには、名も知らぬ雑草が、重なりあって折れ朽ていた。
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中田は、なぜそんなところへ行ったのか、我ながらハッキリとした憶えはないのだが、総てに、あらゆるものに、自棄を味わった彼は、飲みなれぬ酒に胸をただらし気まぐれに乗った郊外電車をとある駅に棄てると、ただ無茶苦茶に、ぶつぶつと独言をいいながら――それは多分、かの女に対する呪咀と、ああ、それはなんといういたましい思い出であろう。彼は幾度か彼の女銀子の幻像を撲倒し引千切りしてきたのだが……と同時に、又自分自身を嘲笑する言葉もあったろうが――歩き廻っているうち、いつの間にか、そんな荒れ果てた景色の中に、自分自身を発見したのであった。