泉 鏡花・泉 鏡太郎

神鑿

朱鷺船

一

濡色を含んだ曙の霞の中から、姿も振もしつとりとした婦を肩に、片手を引担ぐやうにして、一人の青年がとぼ/\と顕はれた。

色が真蒼で、目も血走り、伸びた髪が額に被つて、冠物なしに、埃塗れの薄汚れた、処々釦の断れた背広を被て、靴足袋もない素跣足で、歩行くのに蹌踉々々する。

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