岸田 国士

舞台の言葉

舞台の言葉、即ち「劇的文体」は、所謂、白(台詞)を形造るもので、これは、劇作家の才能を運命的に決定するものである。

普通「対話」と呼ばれる形式は、文芸の凡ゆる作品中に含まれ得る文学の一技法にすぎないが、これが「劇的対話」となると、そこに一つの約束が生じる。それはつまり、思想が常に感情によつて裏づけられ、その感情が常に一つの心理的韻律となつて流動することである。甲の白が乙の白によつてより活かされてゐることである。「心理的飛躍に伴ふ言葉の暗示的効果」が、最も細密に計画されてゐることである。

これは、「自然な会話」と何も関係はない。この「自然な会話」が、「劇的対話」と混同されたところに、写実劇の大きな病根がある。殊に日本現代劇の大きな病根がある。「自然な会話」の総てが悪いのではない。「平凡な会話」が「自然なる」が故に佳しとされたところに、危険がひそんでゐる。

「今日は」

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