岸田 国士

美談附近

両袖献納

一

 川村節子さんは、未だ嘗て、人のせぬことをしたことはなかつた。それほど、目立つことが嫌ひであり、異を樹てるといふことに趣味はなかつた。

ところが、たつた一つ、今度といふ今度は、人のせぬことを、ついしてしまつた。夫の周作が不機嫌な顔をするのも無理はない。

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