伊丹 万作
余裕のことなど
近ごろの世相は私に精神的呼吸困難を感じさせることが多い。しかし、日本人がもしも本来の大和心というものを正しく身につけているならば、世の中が今のようにコチコチになつてしまうはずはないのである。
たとえば直情径行は大和心の美しい特質の一つであるが、近ごろの世の中のどこを見てもそのようなものはない。
直情径行といえばすぐに私は宇治川の先陣あらそいでおなじみの梶原源太景季を想い出す。
「平家物語」に出てくる人間の数はおびただしいものであるが、それらの全体をつうじてこの源太ほど私の好きな人間はいない。